上達の指南

大沢健朗二段の「シングル級への心得」

(3)相手より一歩先へ伸びる

(寄稿連載 2016/01/19読売新聞掲載)

 「2目の頭、見ずはねよ」と格言にあるように、2目でも3目でも頭をはねられると、つらいことになります。これを回避するために私が皆さんに言っているのは「相手より一歩先へ伸びよう」ということです。

 【テーマ図】 白6の二間高ガカリに黒7とはさみ、白8のツケは定石のひとつです。黒9以下は級位者には少々難しい変化かもしれません。
 白14とはねられたところで、黒はどう打ちますか。

 【1図】 ここは2ケタ級の方でも黒1と伸びるでしょう。しかし、白2の押しにじっと黒3に伸び、白4にも黒5と辛抱していられるか、です。
 黒は下辺に自然と確定地が得られ、白Aのハサミには黒Bと応じて、何の不満もない進行でしょう。黒が一歩先に伸びる信念を貫いた成果です。反面、白は車の後押しになっていることに気づいてほしいのです。

 【2図】 △のハネに手を抜くと、白2に当てられ、黒がつらいのはお分かりでしょう。白4と封鎖されてはたまりません。

 【3図】 △に黒1の伸びは当然として、白2の押しに手を抜く人が意外と多い。右辺が心配で黒3の守りを急ぐのですが、これも白4、6とたたかれ、ひどい姿です。

 【4図】 黒1とはねるのも、白2のハネ一本から4と切られ、黒5と当てても白12でツブレ。1図のように辛抱強く一歩先へ伸びているのが肝要なのです。

●メモ● 大沢二段は一昨年5月に結婚した。奥さんに囲碁を教えたいと思っているが、覚えようとはしないのだという。理由は「囲碁を知ってしまうと、プロ棋士のすごさが分かってしまうから――」とのこと。「妻に囲碁を教えないことが、夫婦円満のカギなのかもしれません」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】