上達の指南

大沢健朗二段の「シングル級への心得」

(4)二眼作るのは最後の手段

(寄稿連載 2016/01/26読売新聞掲載)

 石が死ぬのは誰でも嫌なものです。しかし級位者はこの意識が強く、序盤から必要以上に眼の心配をしがちです。私は「二眼を作るのは最後の手段です」と教えています。

 【テーマ図】 黒、白ともに三連星の布石です。黒9のカカリに白10のコスミツケから14の鉄柱は実戦にも出てきそうです。
 ここで黒はどう考えたらよいでしょうか。

 【1図】 2ケタ級の人によく見られるのが、黒1のコスミから3、5のハネカケツギです。早く二眼を確保して、死ぬのは避けたいとの考えでしょう。
 気持ちは分かりますが、序盤からこのように卑屈になっていたのでは勝てません。

 【2図】 たとえば白1と襲いかかられると、黒2と眼を持ってほっとします。ところが白3と封じ込められては、早くも敗勢です。

 【3図】 せめて2図の黒2では、黒1、3と反撃すべきです。白4の引きに黒5以下11とすれば、黒AとBが見合いで、これは白破綻の図です。
 しかし、このような元気があるなら、1図のような打ち方はしないでしょうね。

 【4図】 さて、結論です。
 二眼を作るのは最終手段ですから、黒1、3と中央に進出して行くべきです。黒5と白陣を割っておけば、自分の眼の心配はまったくなく、逆に黒Aなど逆襲の可能性さえ出てきます。
(おわり)

●メモ● 大沢二段は、お酒を飲みながらおいしい物を食べるのが何よりも好き。地方へ出かける機会があると、一人で居酒屋に入り、地元の名物を探す。これが楽しい。ついつい時間も忘れてしまう。洋服や時計、車などにはあまり興味がない。「1万円の服と食事なら、迷わず食事を取ります」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】