上達の指南

大矢浩一九段の「思考回路の改革」

(1)「中間地点」を発見しよう

(寄稿連載 2008/01/07読売新聞掲載)

 アマチュアの方と対局して「考え方を変えればもっと強くなるのに」と思うことがよくあります。新年を期して思考回路の改革を目指しましょう。

 【局面図】 4子局の置き碁です。白1、3、5と構えられると「上辺は白地だ」と思われる方がいますが、まずこれは誤り。黒から打てば、上辺は黒地です。
 黒6の打ち込みは時期尚早ですが、今は上辺に絞って、白15まで進んだ局面を考えることにします。次に黒は、どこに打てばいいでしょう。

 【失敗図1】 プロもアマも一番得をしそうな厳しい手から考えるのは一緒です。そこで黒1と切る手から考えます。白を取ることができれば理想的ですが、白12、14が筋で、白16まで攻め合いは白勝ちです。
 ここで多くのアマチュアは「だめなんだ」と、切りをあきらめてしまいます。

 【失敗図2】 そしてあきらめた結果、黒1とハネてしまいます。この図は、上辺の黒が生きても、白4まで隅に影響してしまい、黒の打ち込みが成功したとは言えません。
 失敗図1の黒1が無理だったとき、あきらめるのではなく、「この切りは、どうなれば可能になるのかな」と考えることが大切です。

 【正解図】 つまり、「理想」と「あきらめ」の間の手を考えるということ。この三つ目の手は、前の二つの手の「中間」が良いという場合が多くあります。

 正解は黒1です。白2と反発してきたら、黒3の切りが成立。黒5まで、今度は、攻め合いは黒の勝ちです。
 白としては、2の手で3と守り、黒2と連絡する進行になるところです。
 一番得をする理想的な手がうまくいかないときに、もう一つ「中間がある」と考える癖を、ぜひつけてください。

【局面図】
【失敗図1】
【失敗図2】
【正解図】