上達の指南

大矢浩一九段の「思考回路の改革」

(4)逃げる前に「大小」を判断

(寄稿連載 2008/02/04読売新聞掲載)

 形勢がよくても悪くても同じ手を打っていては、なかなか勝てません。「状況を判断して打つ手を決める」という思考が大事です。

 【局面図】 私とアマ二段の6子局です。まず、ここまでの黒の疑問手についてお話しましょう。黒14では15、白A、黒Bと出切るところでした。「自分も傷ができ、こわいので切らない」というアマチュアの方が多いのですが、これは錯覚。実戦は、白はつながって黒だけが切れており、「こわい」と考えた状況よりもっと悪くなっています。
 さて、白17まで進んだ場面に移りましょう。黒の次の手を考えてください。

 【失敗図】 実戦は、黒1と逃げ出しました。逃げたからには、黒3で6と弱い石から動くべきでしたが、白4、6と封鎖されて右下に影響が及び、生きても黒不満です。

 【参考図】 このように白がはっきり生きていない場面では、黒1またはAが正解。攻めを続行できるため、価値が大きいからです。
 「取られるから逃げる」のではなく、「取られるのが大きいから逃げる」という思考が大切なのです。

 【正解図】 囲碁は交互に打っていますから、盤上には必ず、自分が得する所と損する所があります。損失補填(ほてん)よりも、自分が得する所をもっと生かすのがお薦め。黒1やAの大場がいいでしょう。もし右辺を打つなら、▲を軽く捨てて黒aです。白b以下取りにくれば、白fまで先手をとって黒1に向かえます。
 ▲がなければ、白bに打たれるのが嫌だとは思わないはず。▲があるだけで思考回路を乱してしまうようです。「取られるのが大きいから逃げる(小さければ逃げない)」という思考を身につけましょう。
 思考回路をかえ、これまでの損をとり返してください。
(おわり)

●メモ● 大矢九段は1月10日、世界選手権・富士通杯の最終予選決勝で趙善津九段に惜敗。「長期的に見れば、私が出場する方が日本のためになったと思われますが」と冗談交じりに語った後、「趙さんには私の分も活躍してほしい」。

【局面図】
【失敗図】
【参考図】
【正解図】