上達の指南
(2)「絶対の一手」を与えない
(寄稿連載 2008/01/21読売新聞掲載) プロとアマは、技術的な差よりも、思考回路に決定的な違いがあるのではないかと私は思っています。今週は荒らしをテーマにしましょう。
【局面図】 アマチュア四段同士の実戦で、白20まで進んだ局面。この後、囲い合うことも考えられますが、左下の白模様を荒らすとしたら、黒はどう打ちますか。
【失敗図1】 実戦は、黒1と三々に入りました。白14まで部分的には定石ですが、左辺の白の幅が理想的。また、下辺の白も固めて、黒から打ち込む狙いを消してしまいました。黒は先手で生きても、満足の結果とは言えません。
【失敗図2】 では、堂々と黒1と掛かるのはどうか。黒3と二間に開く余地はありますが、白4から6と反撃されそう。自然と周囲の白を固めることになります。序盤早々、生き死にの心配をすること自体もつらいものです。
三々では隅に偏り過ぎ、掛かりでは辺に偏り過ぎ。では、どうすればいいでしょう。
【正解図1】 先週もお話した「中間」を考えましょう。黒1がこの場面のいい手。黒1に白2なら黒3とハネ、黒の動き出しをけん制した白20まで、失敗図1より白地にめり込み、黒7が働く味も残ります。
手順中、白4は大切。また黒11、13の二段バネは、白16で17と押さえられない場合の打ち方です。白17には、黒Aから白3子をシチョウで取れます。
黒1では黒9の地点も有力です。
【正解図2】 黒1に、白2なら黒7まで安定形。荒らしの目的を達成しています。
黒1のつけに、白がどちらから押さえるかは私も迷います。このように相手を迷わせるのは、相手にぴったりの一手がないということ。絶対の一手を与えないという考え方も取り入れてみてください。