上達の指南
(3)「利かせた石」を助けない
(寄稿連載 2008/01/28読売新聞掲載) 石を取られるのが嫌だというアマは大勢います。そこで、「取られるから助ける」という思考回路になるのですが、これは大きな誤りです。
【局面図】 互いに模様を張り合う進行から、黒17と肩をついて黒19とつけるのはよくある利かし。白20となった場面で、黒の次の手を考えてください。
なお、「利かし」とは、自分が外側に打ち、相手に内側に受けさせる得な交換のこと。そして、先手になっているうちが利かしです。白18、20は「利かされ」ですが、手を抜けないところです。
【失敗図】 黒1やAは失敗。後手を引き、せっかくの利かしの効果が台無しです。黒1やAに打ってしまう人は、「白1に出られると、黒が取られるから助ける」という思考回路ですが……。
【正解図】 右上は手を抜き、黒1と大場に向かうのが正解です。白2と出られると、確かに黒の数子は取られます。でも黒13まで、白は生きている石から少し地を増やしただけ。黒は右辺一帯の模様がどんどん固まって、大歓迎の進行です。
【変化図】 正解図の黒5では、黒1から捨てる打ち方もあります。黒5まで、やはり黒が固まって大いによしです。先手をとりたければ、黒5でコウを取ることも考えられます。急ぐ場所がなければ、黒5が趣のあるお薦めのつぎです。
利かせた石は、助けるよりも捨てる方がはるかに得。「取られるから助ける」という考え方は、損を招いてしまいます。
囲碁は陣地が多い方が勝ち。「石を取る(取られる)」は、「攻める」「荒らす」「囲う」などと同じように、プロセスの一つに過ぎません。その意味でも、「取られるから助ける」という思考回路は目的をはき違えているわけです。
●メモ● 大矢九段は韓国に頻繁に足を運ぶ。3月のLG杯、夏の三星火災杯の予選にも必ず出場する。「勝てば4、5日、毎日打つのできついのですが、老体にムチ打って今年こそぜひ本戦進出を果たしたいものです」