上達の指南

坂口隆三九段の「しっかりつなごう」

(2)じっくり読む習慣が肝心

(寄稿連載 2008/07/07読売新聞掲載)

 手筋などの問題として出されれば気がつく手なのに、実戦ではつい見落としてしまった。そんな経験はありませんか。実戦で最善手を見つけられるようになるには、手拍子で打ちそうなところで我慢し、じっくり読む習慣をつけることです。

 【テーマ図】 アマチュア五段を相手にした4子局の指導碁です。
 白が左上白1、3と手を着けたのに対して、黒4と切って反発。白13まで険しい変化になりました。ここでやり損なうと大変です。黒2、10の要石を右方につながらせるとともに、左上黒も傷まないような進行を選ぶ必要があります。それを可能にする1手は。

 【変化図】 正解は黒1のツケ。妙手と言ってよく、実戦でこの手が思い浮かぶアマは、相当な腕前です。
 白2と出る手を誘っておいて黒3。黒1の効果で白のダメが詰まっているのがみそで、白4、黒5の時、白は7に切ることができないのです。黒は7とつぎます。白8と飛んで頑張っても、黒9の割り込みが筋で、白はうまく行きません。

 【失敗図】 準備工作をしないで、慌てて2子を助ける黒1は無策。実戦では、こう打つ人が多いと思いますが、上手は喜んで白2、4と出てくるでしょう。中央へ頭を出そうともがいても、白12のかけがぴったりで、封鎖されてしまいます。

●メモ● 坂口九段はここ20年来、ほぼ週1題のペースで詰め碁を作り、京都の地元紙で出題してきた。実戦の中で詰め碁になりそうな場面が出てきた時、それを基に問題を作り、ためておく。「いつのまにか1000題くらい作ったことになりますね。気分転換になるので好きです」

【テーマ図】
【変化図】
【失敗図】