上達の指南

坂口隆三九段の「しっかりつなごう」

(4)一路の違いで攻守逆転

(寄稿連載 2008/07/28読売新聞掲載)

 この講座では、石を効率よくつなげることを考えてきました。最後は私自身が相手にうまくつながられて窮してしまった1局を選びました。1984年の第10期碁聖戦本選、王立誠七段(当時)との対戦です。

 【テーマ図】 私の白番。右上から右辺、左下などで実利を稼いだ王さんが、白の勢力圏の上辺に黒1と打ち込んできました。私は白2以下、攻めている気分だったのですが、実は重大な読み抜けがありました。白14と引いた時、王さんが絶好手を用意していたのです。その一手とは。

 【変化図】 黒1と打たれて「あっ」と思いました。プロなら読んでいなければいけない手を見落とし、王さんの読み筋にはまっていたのです。
 この手は、白から2線の黒石を取る手を防ぐと同時に、イの断点をカバーしています。しかも眼形が結構厚く、白から厳しい攻めがない。困った私は右上白2とつけ、気合で白4と連打したものの、中央黒5の大きなハネを許し、負けコースに入ってしまいました。

 【失敗図1】 黒1は見るからに無策な手。白2と切られて、黒Aなら白B、黒Bなら白Aです。

 【失敗図2】 黒1のかけつぎには、白2、4と黒1子をかみ取る手が厳しく、眼がない黒は苦しい。正解と一路の違いが大違いなのです。
(おわり)

●メモ● 坂口九段の趣味は、ゴルフと、テレビでのスポーツ観戦。阪神タイガースのファンで、今年の戦いぶりにはご満悦だ。メジャーリーグの中継にもよくチャンネルを合わせる。また最近、NHKの大河ドラマ「篤姫」を夫人と2人で見る。「主人公が碁を打つシーンがよくできていた」と感心。

【テーマ図】
【変化図】
【失敗図1】
【失敗図2】