上達の指南

酒井真樹八段の「中盤戦の急所」

(2)競り合いは弱い石から動く

(寄稿連載 2005/05/02読売新聞掲載)

 中盤で石が競り合っている時も、石の強弱を見極めることが大切です。そして、「弱い石から動く」ように心がけましょう。

 【テーマ図】 白が△とかけた場面です。下辺で石が競り合っています。こういう局面で大事なのは、黒白双方の「どの石が強く、どの石が弱いのか」を判断することで、その判断さえつけば、黒の次の一手は自然と浮かんでくるはずです。

 【1図】 黒1の飛び。これが最も素直、かつ最善の一手です。先週からお話ししてきた「弱い石の頭を出す」一手ですよね。
 さらにこの碁の場合で見逃せないのは「左右の白も弱い」ということです。つまり、この黒1の飛びは、自らが頭を出すと同時に、
・相手の弱石を分断する
 という意図も併せ持った絶好手だということです。まさに「この一手」とも言うべき急場でした。

 【2図】 黒1のカケツギも同点に白から裂いて来られる手を防ぎつつ進出する好点ではあります。
 しかし1図の黒1との決定的な違いは「下辺の黒はすでに生きている」という点。白1とされても黒の生死には関係がないので、今すぐ急ぐ個所ではないのでした。白2のケイマでこちらを封鎖されては大ピンチ――このあと仮にモガいて生きたとしても、周囲に大変な悪影響が及ぶことは必至です。
 1図の黒1は、「弱い石から動く」という鉄則に則った好手なのでした。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
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