上達の指南

酒井真樹八段の「中盤戦の急所」

(4)左辺の黒模様にどう臨む

(寄稿連載 2005/05/16読売新聞掲載)

 中盤の戦いの急場の指針となるのが「石の強弱に関する判断」であることは、すでにお分かりいただけたことと思います。
 最終回も基本となる考え方は同様ですが、前3回とは少し意味合いの異なるテーマを選んでみました。

 【テーマ図】 白番です。この局面を見渡してすぐ目に付くのが、左辺一帯の黒模様だと思います。この模様の規模はかなり大きく、このまま手をこまねいていては、左辺が地模様へと化してしまうことでしょう。よって本テーマのポイントは「左辺の黒模様にどう臨むか」という点に絞られます。
 となると左辺に取り残された格好となっている△の1子が気になります。

 【1図】 まず白1と動き出すことを誰もが考えることでしょう。
 ですがこれは重い考え方で、黒2、白3に続いて黒4と間を割いて来られ(この"相手の弱石を二分する"という手段については、前3回でお話ししてきたとおりです)、白は苦戦に陥ってしまいます。分断された上辺と左辺の白一団が治まるまでには相当の手間がかかるので、左下一帯の黒模様を大きくまとめられてしまうことでしょう。

 【2図】 そうなった原因に気付けば、△を軽く見て、白1とボウシする発想に思い至るはずです。
 黒は2と受けるくらいのものでしょうから、白3と二間に飛び、本来の目的であった「左辺の黒模様の消し」を達成したことに満足します。(おわり)

 

【テーマ図】
【1図】
【2図】