上達の指南

酒井真樹八段の「中盤戦の急所」

(3)相手を二分し主導権握る

(寄稿連載 2005/05/09読売新聞掲載)

 これまで「自分の石が弱く、封鎖を避けながら相手の石を二分する」ケースを取り上げましたが、今回のこの局面では白に弱い石はありません。では相手の黒に弱い石はあるのか? その見極めが、次の手を決定する大きなポイントとなります。

 【テーマ図】 ▲と飛んだ場面で白番です。割と落ち着いた局面で、すぐには焦点がつかめないかもしれませんが、盤面全体をよく注意して眺めていれば、やがてポイントが見えてくるはずです。

 【1図】 白1の押さえは黒Aとの比較で第一級の大場です。しかし黒2と肩を突かれてみると、右辺と下辺の黒が連絡して落ち着いた碁となってしまいます。つまり本局面でのポイントは「右辺と下辺の黒がまだ治まっていない」点にあります。

 【2図】 実戦で私は白1と肩を突き、右辺と下辺の黒を分断していきました。自分の石には何も不安がないのですから、相手の石をこのように二分することで、碁の主導権を握る――この意識が非常に重要な局面なのでした。
 実戦の経過を追ってみましょう。黒は2、4のツケ引き以下、下辺を治まる策に出ましたが、白9のハネに黒10の頭出しが省けません。そこで白11の伸びが利くのが、白にとって気持ちのいいところ。
 続いて白15と上辺の黒模様に臨みました。とはいえ依然として右辺の黒一団を横目でにらんでいるので、黒も強い反撃には出られない状況。すなわち白は、主導権を握ることに成功したということです。

 

【テーマ図】
【1図】
【2図】