上達の指南

瀬戸大樹六段の「忘れられない局面」

(2)カス石助けた不急の一手

(寄稿連載 2005/11/14読売新聞掲載)

◆第29期天元戦予選 白 瀬戸大樹四段 黒 結城聡九段

 結城先生には4局教えていただいていますが、まだ1局も勝てません。感覚も力も遠く及ばないということでしょうね。猛勉強して少しずつでも差を詰めたいものです。

 【テーマ図】 右上から始まった競り合いが中央に波及しています。黒39について、「少し重かった。大ゲイマ(56)が相場」と結城先生の感想があります。
 白58では59のコスミが厳しく最善でした。白60は71のならびが最強でした。白が2手緩着を打ったため、黒63と割り込む好手を誘発し、75までぴったり生きられてしまいました。黒81まで、白が少し苦しい局面です。白の次の一手は?

 【変化図】 局後の検討で得た結論では、白1と大ゲイマに構えるのがいい見当だったようです。黒は2と連絡を確かめるぐらいが相場ですが、白3のノゾキを利かしてから5と下がって、じっくり黒を攻めます。これは難しい碁になっていたはずです。

 【実戦図】 白1と2子を助けたのは不急の一手。中央の黒も右辺の白もすでに生きていますから、実利もわずか10目ほどの大きさでした。アマの方相手なら、「どうしてそんなカス石を助けるんですか」などと、えらそうにいうところでしょうね。我ながら情けない限りです。
 黒2の出から4と先行され、白5から9の脱出に、黒10と根を下ろされてしまいました。白11のツケは仕方ありません。黒12、14が結城先生らしい強烈なパンチでした。黒18と切られては、白に勝ち目はなくなりました。

 攻めの目標にしていた薄い黒に威張られ、逆に白が攻められたのですから、さんざんです。

●メモ● 瀬戸六段は堀田陽三九段が主宰する神戸倶楽部で月2回、結城聡九段の研究会に参加している。メンバーは山田規喜九段、小西和子八段。それぞれの打ち碁を1局ずつ研究する。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】