上達の指南

瀬戸大樹六段の「忘れられない局面」

(4)遅い仕掛けでいなされる

(寄稿連載 2005/11/28読売新聞掲載)

◆第16回世界選手権・富士通杯3次予選 白・林海峰名誉天元 黒・瀬戸大樹四段

 まだ21歳の若造が「世界に通用する棋士になりたい」などといえば、生意気に聞こえるかもしれませんが、「夢は大きく」です。現在、目標にしている棋士の1人は羽根直樹棋聖で、同郷(三重県出身)のよしみからか、院生の時、何局も教えていただきました。

 【テーマ図】 林先生とは初手合。ご自宅の研究会には2年ほど通わせていただき、非常に勉強になりました。深く感謝しています。
 白28のツケに対する黒29の引きは利かされで、黒29ではイとハネて反発すべきでした。地を大切にしようという守りの手を打つと、後々まで消極的になってしまうものです。
 白36、38の二つの大ゲイマは林先生の得意の手です。ここまで、難しい碁かなと思っていました。

 【変化図】 何はともあれ、ここは黒1と急所を一撃する形でした。白2には黒3とはい、白4に黒5のコスミが好調子です。これなら黒十分で、攻めの効果を期待でき、楽しみのある形勢でしょう。
 白2をAのコスミなら、テーマ図の白38は最初からBの一間トビの方がいい理屈です。

 【実戦図】 黒1、3は先々のことを考えて厚いと思って打ちましたが、ソッポだったのです。白4とボウシされ、黒5から7と厚く構えている間に、白8と打ち込まれ、12まで隅をえぐられました。
 この後、Aの急所に迫りましたが、大勢に遅れてからの仕掛けで、軽くいなされてしまったのです。

 この講座の4局を振り返ってみますと、ぼくの碁は勝敗に直結する局面で、仕掛けのタイミングがワンテンポずつ遅れているんですね。この欠点を是正できるよう勉強のし直しです。(おわり)

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】