上達の指南

瀬戸大樹六段の「忘れられない局面」

(3)実にならなかった模様

(寄稿連載 2005/11/21読売新聞掲載)

◆第8回三星火災杯予選 白・周鶴洋九段 黒・瀬戸大樹六段

 三星火災杯は韓国の棋戦。自由参加でとても勉強になりますが、4勝しなければ本戦に入れません。ぼくは2回目の出場(最初は1勝1敗)で、初戦敗退でした。

 【テーマ図】 周九段とは初手合。白16の飛びから18と構えたのは、いかにも周九段らしいじっくりした打ち方です。白16では17のボウシを考える人が多いと思います。黒25は26のトビもありました。それなら「白はかかり(25と)」と周九段の感想でした。白30となり、ぼくは次の手を自信を持って打ったのですが……。

 【変化図】 柳先生(時熏九段)は、「すぐにツケ二段が面白いんじゃないか」との指摘でした。白4の当てから6とつぐ。黒7、9に白8、10、黒11に白12は絶対で一本道。ここで黒13と大ゲイマに囲うのが足が早い。いわれてみれば実戦的で、大いに納得でした。
 白4を5と切り、黒4、白Aは、単に黒13と打たれ、隅は味残りで白が打ちきれません。

 【実戦図】 ぼくは黒1を「この一手」と信じて打ったのですが、左上も右辺も白が厚いから、左辺と下辺の黒模様はあまり広げても効果はない、との考え方が正しかったのです。
 白2は当然の打ち込み。白6から黒11と切り結んで、のっぴきならない戦いです。白12のツケはこの一手で、30までの変化になりました。ぼくは自信を持っていたのですが、冷静に考えてみると、白も厚い2子を抜いているので細かい碁なんですね。この後、じわじわといじめられ、1目半負けました。碁の広さと深さを教えられた貴重な一局でした。

●メモ● 瀬戸六段は3年半ほど前、中野泰宏九段(当時七段)と初めて中国に行って以来、6回訪中している。勉強中の中国語は、「1人で中国を旅行するのはまだ無理」のレベルという。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】 白24打ち欠く(12)、黒25
取る(20)、白30取る(12)