上達の指南

瀬戸大樹七段の「手抜きの考え方」

(1)敵陣で弱い石を作らない

(寄稿連載 2013/07/23読売新聞掲載)

 アマの方は、受けることから考える傾向があるようです。プロは、相手の言いなりになっていたのでは碁に遅れますから、手を抜くことから考えます。
 ただし、手を抜いて他へ先着しても、反撃でひどい目に遭うようではいけません。手抜きの決断には、読みの裏付けが必要です。後手でも受けるか、いっそ手を抜くか、その判断力をつけていただきたいのです。

 【テーマ図】 左辺の黒3子は、白陣が迫って孤立しています。黒1のケイマが逃せぬ急所です。黒を補強しながら白模様を制限しています。白2、4のツケ伸びには、黒3、5とはねついで手厚く構えます。白6と黒7は見合いです。白6の囲いくらいなら仕方ありません。黒7の打ち込みが厳しい。黒5までの厚みを背景に強く戦うことができます。

 【1図】 手を抜いて、黒1の締まりも大きい。しかし、白2のケイマが絶好点になります。黒3の守りに、白4とさらにあおられます。白6の飛びまで広げられると、白模様が理想的に成長します。相手の模様との接点では、弱い石を作らないことが肝心です。

 【2図】 少し形が変わります。下辺に▲2子があって、左辺の白が模様に発展する可能性はありません。手を抜くチャンスです。黒1から3と、上辺に向かうのが機敏な決断です。白4、6と来られても、黒7まで逃げれば大丈夫。周囲の状況によって着手は変わってくるのです。

●メモ● 瀬戸七段は1984年、三重県出身。関西棋院所属。2000年入段、09年七段。10年本因坊リーグ、11年棋聖リーグ入り。棋風はバランス感覚のいい本格派。期待の大きい若手である。国内はもとより、早くから海外の棋士とも積極的に交流、実力をつけてきた。

【テーマ図】
【1図】
【2図】