上達の指南

瀬戸大樹七段の「手抜きの考え方」

(4)状況を見分ける判断力を

(寄稿連載 2013/08/13読売新聞掲載)

 よくある形でも、状況次第で打つ手が変わります。守りの本手が、緩手になることもあるのです。守るべきか、手を抜くべきか、その判断力が問われます。

 【テーマ図】 左辺の黒は三間開きでスキがあります。黒イとケイマに守るのが定型ですが、この碁では守るだけの緩い手なのです。白ロの詰めに回られると、上辺は白の勢力圏です。
 黒1といっぱいに行くのが好点です。白2と隅を守れば、黒3の飛びから、手順で黒5の飛びも利かします。黒7と右側も飛んで広げれば、今度は上辺に黒の模様が出現します。

 【1図】 左辺の黒は手を抜いても大丈夫。黒1に白2と打ち込まれても困りません。黒3と飛んで相手の出方を見ます。白4と中に出てくれば、黒5のコスミで白2の動きを封じます。白4でAと逃げだせば、黒Bと飛んで好形です。▲の1子もまだ自由の身です。

 【2図】 △の詰めが来たなら、黒Aと守る一手。手を抜いて、黒1の詰めに先走ってもいいことはありません。白2の打ち込みが強烈です。黒3の飛びに白4とこすまれると、▲を動くのは危険です。黒5と飛べばこっちは好形ですが、白6で大きな白模様を作られます。
 後手でも受けておくべきか、手を抜いて他の好点に回るか、状況によって使い分けてください。相手の言うままにならないように、自分で決断する力をつけましょう。
(おわり)

●メモ● 瀬戸七段は、スポーツが好きで、サッカーは見るのもやるのも楽しいという。甘いマスクで、サッカー選手になっても人気者だったろう。性格も穏やかで誰にでも親切だから、関西では老若男女、瀬戸ファンは多い。タイトル戦に登場したら、井山裕太棋聖と人気を二分するに違いない。

【テーマ図】
【1図】
【2図】