上達の指南

瀬戸大樹七段の「手抜きの考え方」

(3)天王山に先着し主導権を

(寄稿連載 2013/08/06読売新聞掲載)

 模様同士がぶつかり合っているところでは、双方の天王山になるポイントは分かりやすいものです。
 しかし、そうでなくても天王山は存在します。相手に打たれる前に、気が付いて先着できれば、主導権を握れるでしょう。

 【テーマ図】 右上の白は外側に石がありますが、厚いとまではいえません。
 この局面では白1のケイマが逃せぬ好点です。この一手で、一団をくつろげると同時に、上辺の黒模様を制限しています。一手で二つの意味がある、価値の高いポイントです。

 【1図】 上辺で手を抜くのは感心しません。白1の打ち込みも気になるところですが、黒2のツケから外側を止められます。白3のハイから7と構えて、白地は増えますが、黒8の天王山に回られ、黒模様が大きくなります。
 さらに黒イと迫ると、攻めながら黒地が増えていくでしょう。

 【2図】 右辺は同じ形ですが、左辺が違います。左上に△のシマリがあって、上辺は、黒模様の拡大が望めない碁形です。
 ここでは、白2のケイマは天王山とはいえません。白1と締まって地を求める方が価値が高いのです。黒2のケイマには、また手を抜いて、白3と大場に先行します。
 右上の白は攻められても、周辺の黒が大きく得をする展開にはなりませんから、慌てなくてもいいのです。

●メモ● 瀬戸七段は、棋戦の解説もていねいでうまいが、講座も分かりやすい。囲碁大会の大盤解説や、ワンポイント解説にも定評がある。イベントなどの仕事も多い。しかし、本人はなんと言っても対局で天下に挑みたい。元気な関西勢のど真ん中で、早くタイトルに近づきたいところである。

【テーマ図】
【1図】
【2図】