上達の指南

瀬戸大樹七段の「手抜きの考え方」

(2)本手で模様をけん制する

(寄稿連載 2013/07/30読売新聞掲載)

 相手の模様の近くでは、弱い石を作ってはいけません。しっかり守って、付け入るすきを与えないようにしましょう。

 【テーマ図】 上辺に黒模様があります。今、▲のケイマで広げてきた場面です。右辺の白には、黒イと打ち込まれるスキがあり、白1と飛んで備えておくのが、後手でも立派な一手です。白1は守ると同時に、上辺の黒模様をけん制しています。二つの役割を果たす価値の高い一手です。

 【1図】 白1と下辺に開くのも大場ですが、右辺で手抜きはまずいのです。黒2の打ち込みから4とケイマするのが黒の狙いです。白5のハイから7とはねて渡れば、部分的にはどうということもありませんが、黒14のブツカリまで、黒模様がめいっぱいに広がりました。
 白13まで連絡しただけの白の姿が、いかにもちっぽけに見えませんか。白1と下辺に打った手が甘く、黒の大胆な作戦を許しました。

 【2図】 上辺に△の開きがある碁形です。白イの飛びも部分的には立派な手ですが、この形では守るだけでやや緩いのです。黒ロと上辺に開くのが、大きな手になっています。
 右辺は手を抜く決断をして、白1と上辺に開きたい。白地を増やして黒地を減らす絶好点です。黒2の打ち込みから14のブツカリまで、今度は黒が厚くなっても気にしません。上辺はすでに白が占めていますから、黒模様が大きくなる可能性はありません。

●メモ● 関西棋院の瀬戸七段は、日本棋院の棋士との交流対局も多く、若いので、東京に出向いて打つことが多くなる。上京すれば研究会にも参加して、熱心に勉強を続けている。この努力がリーグ入りにもつながっているが、これで本人が満足しているはずもない。目指すのはもっともっと上である。

【テーマ図】
【1図】
【2図】