上達の指南

下島陽平八段の「碁はおおらかに打ちましょう」

(1)ケイマ連打で全局を圧倒

(寄稿連載 2014/07/29読売新聞掲載)

 私がアマチュアの方にお勧めしたいのは、大らかな気分で碁を打つことです。この利点は、石の方向性さえよければ、必死になっていい手をたくさん打つ必要がないことです。

 【テーマ図】 黒の三連星に、白14のカカリから16に構えるのは、よく見る布石でしょう。白20としまったところで、黒はどこに目を向けますか。

 【1図】 三連星の厚みをバックにして、黒1の「馬の顔」が伸び伸びした好点です。
 白2の受けには、更に黒3、5とケイマを連打し、黒の大模様は全局を圧倒する勢いです。黒は何も難しい手を打つ必要はありません。これを白が嫌って、白2でAなどと中央を目指すなら、黒Bと下辺になだれ込んで十分です。

 【2図】 全局的な視点がないと、黒1の打ち込みなどに目が行きがちです。白2のツケには黒3と単に割り込む手を知っていないといけませんし、黒7以下13まで生きるだけになります。
 白地を荒らしたものの、白に強力な厚みを築かれ、白AまたはBと弱みを突かれる心配が出てきます。

 【3図】 黒1の飛びもあるでしょう。白2の飛びに黒3とぼうしすれば、1図の迫力にはやや劣るものの相当な構えになります。1、3図とも見た目の景色を大事にした素直な打ち方です。このように、特別難しいよい手を打たずに局面をリードできるのです。

●メモ● 下島八段の趣味は野球。そのセンスは碁界屈指との評判で、投打ともにこなす。スピードガンで計測した最速は127キロ。最近は土、日が忙しく、あまりプレーする機会がないのが残念という。ちなみに、プロ野球日本ハムの武田勝投手は中学の同級生。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】