上達の指南
(3)慎重に全局見据えた好手
(寄稿連載 2014/08/12読売新聞掲載) おおらかな碁を打つにはどうしたらよいか――。答えは簡単で、おおらかな気分で盤に向かうことです。部分でよい手を知っていて、実際に打てても、それ以前に石の方向がよくないと形勢を損じてしまうのです。
【テーマ図】 この布石もよく見かけるものです。白24のハサミに黒25と両ガカリし、黒31と伸び込んだところがテーマです。この後、どのように運ぶのが面白いでしょうか。
【1図】 白1の伸びが、ゆっくりしているようで全局を見据えた好手。黒は2の備えが省けません。続いて、白3の一間が連動した手。黒4の開きに、白5から7のボウシと存分に模様を広げるのが面白い。白が楽しみな形勢でしょう。
黒6で7に飛んで模様化を阻止するなら白Aがよく、黒Bには白Cです。これは模様ならぬ確定地になってきます。
【2図】 白1の伸びに手を抜いて黒2、4と来たなら、白5のツケが知っておいてほしい手筋です。白9に開いて上辺を荒らせば、黒2に先着した意味がありません。手順中、黒6で7に押さえると白6、黒8、白A、黒B、白C、黒D、白Eで、黒が苦しくなります。
【3図】 最後に1図の白1について補足しておきましょう。
これで白1と先を急ぐと、黒2の下がりから4とたたかれます。これで白が悪いわけではありませんが、局面が細分化され、難しい戦いになります。
●メモ● 「プロ棋士という職業を応援してくれるファンがいないとプロの価値がない」。下島八段の信念。このため普及には対局同様に力を入れ、地元の普及団体「名古屋アミーゴ」の中心メンバーでもある。独自の囲碁ゲームを考案し、イベントなどでファンサービスに努めている。