上達の指南

下島陽平八段の「碁はおおらかに打ちましょう」

(2)気前いい捨て石の効用

(寄稿連載 2014/08/05読売新聞掲載)

 囲碁は勝負を争うゲームですから、勝ちたい、勝ちたいという気持ちになってきます。すると、視野が狭くなって、部分的なことを追求しすぎることになります。必然的によい手をたくさん打たなくてはならず、負担が増えてしまうのです。

 【テーマ図】 黒1、3、5の構えに、白は二連星から6に割り打ちました。ひと頃はやった布石です。黒11の肩ツキ以下、19まで勢力を築いて、黒はどこに目を向けますか。

 【1図】 黒1と構えるのは比較的容易に目が行きますが、問題は白2と打ち込まれたときの対応です。
 黒3のツケ以下、白6のツギまでは定型。ここで▲の1子にこだわらず、気前よく捨てることが肝心です。
 それが黒7の押さえで、白8の当て以下、1子を捨てます。続いて、黒13と隅をがっちり守ってしまえば捨て石作戦成功です。

 【2図】 前図の黒7では、どうしても黒1と助けたくなります。白2のハイから4に飛ばれると、黒5の押しから勢いで白12までが想定されます。これは黒が甘い。

 【3図】 1図の黒5で、黒1から3につぐのも、▲の1子を助けたい一心の打ち方です。
 白4の抱え以下、黒7まで確かに▲と連絡はできましたが、白8と天王山のケイマに回られては不十分です。黒地が消えると同時に、白に厚みができては面白くありません。

●メモ● 下島八段はギターも得意。7、8年前に大沢健朗二段と教室に通って覚え、いまは毎日、ギターに触れている。小学生のとき、音楽の先生から「才能がありそうだから、本格的に学んだら」と言われたほど、音楽センスは折り紙付き。作曲もし、30曲近く作っているという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】