上達の指南

下島陽平八段の「碁はおおらかに打ちましょう」

(4)模様には連帯感が不可欠

(寄稿連載 2014/08/19読売新聞掲載)

 私は子供の頃から細かいことが嫌いで、武宮正樹先生の宇宙流に憧れていました。アマの方が宇宙流をマネするのも結構ですが、武宮先生には深い読みの裏付けがあることをお忘れなく。

 【テーマ図】 おおらか戦法最終回は、私の院生時代の実戦を題材にしました。私の先番で、白は6、8の構えから18まで模様志向です。黒19のスベリに対し、意外な着想で来られました。

 【1図】 白1と肩を突かれたのですが、ここまでの流れを引き継いだ連帯感のある好手で、感心させられました。
 黒2のハイから4の曲げに白5と止められ、白7の飛び。当然、黒8とケイマしたところ、なんと白9。驚きましたが、これも白1以下と連帯したものです。この後、黒Aには白B、黒C、白Dで止まっています。黒10と締まったところ、白11と打たれ本当に参ったのです。

 【2図】 白1に対して黒は2と押したいのですが、白3の押さえが強手で黒4の伸びに白5、7とはねつがれて弱ります。黒8以下白17までやむを得ない進行ですが、白に両辺を打たれては大いに不満です。

 【3図】 1図の白9で、白1、3のツケ伸びなら常識的で、黒4から6とケイマします。これなら黒は十分戦えると思っていたのですが、甘かった。反省の一局ですが、おおらかな碁が決して遅れているわけではないことがお分かりいただけると思います。
(おわり)

●メモ● 下島八段の揮毫(きごう)は一風変わっている。「いい時も悪い時も 同じように接してくれる人と 一生つき合っていきたい」。プロ野球の落合博満氏の言葉で、大好きなのだという。人生には波があるが、いつでもどこでも顔を出して、声をかけてくれる人を大切にしたいと思っている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】