上達の指南
(3)慌てずダメ詰まりに注意
(寄稿連載 2016/06/14読売新聞掲載) 相手はスソ空き。それっ、サルスベリ――。慌ててはいけません。立ち止まって考えることも大切です。石の形によってはサルスベリが悪手になることもあるのです。
【1図】 黒1のサルスベリです。白地をたくさん減らそうという気持ちは分かります。でも、白8までとなると、黒はダメ詰まりで4につげません。白Aがあるからです。まるまる2子を取られて大損です。
【2図】 白2のコスミツケから止めるのは、1図と比べて黒のダメがひとつ空いていて手入れ不要に。これは白の失敗です。
【3図】 黒1の小ゲイマはどうでしょう。白6まで、いずれ白Aで止まってしまいます。これでは面白くないですね。白2のところが急所のようです。
【4図】 黒1とこすみます。小さいようですが、白は2と打つよりなく、黒3と進出すれば、サルスベリと同じ結果となります。先手も確保しました。こうして見ると、サルスベリとコスミは親戚のような関係にあるようです。
【5図】 黒1のコスミに白2と目いっぱいに止めてきたらどうしますか。黒3と当てます。白6までなら黒7とはねて、これはコウです。しかしコウに負けた姿を考えれば、白は相当な覚悟が必要でしょう。
【6図】 サルスベリを打つ時はダメ詰まりに注意して下さい。この形も黒2子はつげません。安易に打つと痛い目に遭います。
●メモ● 新海五段は院生時代、毎週のように対局の記録係を務めた。当時は1人で2局の記録を同時につけるのが当たり前。秒読みになるともう1人加わる仕組みだった。記録係が居眠りをしてしまい、対局者自ら記録をつけていたという話もあったという。「おおらかな時代でした」