上達の指南
(4)工夫の逆寄せで得を図る
(寄稿連載 2016/06/21読売新聞掲載) サルスベリは通常、先手8目と言われる大きな寄せです。チャンスがあれば押さえてしまい、すべられるのを未然に防いでしまいましょう。ただ、やみくもに押さえると損をすることがあります。形によって押さえ方(防ぎ方)を変える工夫が大切です。
【1図】 白1の押さえはサルスベリを防いだ逆寄せです。後に白A、黒B、白C、黒Dまでのハネツギが権利となり、サルスベリされたのと比べると9目得です。
【2図】 Aに断点がある時に白1と押さえるのは、黒2にはねられた時、白3に備えるよりなく、黒4から7まで後退。これではサルスベリを決められたのと変わりません。
【3図】 白1と下がり、黒2に白3。きれいに止まりました。後に白A、黒Bとなるところ。2図に比べて4目得です。
【4図】 △の下がりは、いわゆる両先手と言われる大きな手です。すべられてはかなわないと、黒1と押さえれば5まで、白の先手は変わりません。
【5図】 ▲に石がある時は、黒1と飛びます。白2と出て4と押さえたら、そこで手抜き。後に白A、黒Bとなりますが、白Bのサルスベリを先手で防いだことに満足します。白は後手になることは避けたいので、4には押さえないでしょう。
【6図】 この形は後手ですが、その利点は黒A、白B、黒C、白Dが権利となり、白地を2目減らしていることです。(おわり)
●メモ● 新海五段は都内のホテルの囲碁サロンで講師を務めている。入門教室ではマナーの大切さを伝える。例えば、考えている時に石を持たないこと――。「碁は弱くてもマナーがいいと打ってもらえる。その逆は相手がいなくなってしまう。マナーが悪いと囲碁の楽しさが減ってしまうのです」