上達の指南
(3)未練残さず被害は小さく
(寄稿連載 2011/02/15読売新聞掲載) 石を取られるのは嫌なことですが、捨てるとなると話は別です。石を攻められ苦しんでいるとき、うまく捨てられれば苦しみから解放されます。
【テーマ図】 岩田一・八段門下の兄弟子、首藤七段との一局です。黒1のハサミに白2、4とツケ切られたところで、私は下辺の4子を捨てることにしました。この石に未練を持っている限り、苦しむばかりです。
【実戦図】 白4と伸びられたとき、黒5から7のツギが頑張った手です。白8と取られても捨て石を利用して、黒9以下15まで左辺の地が大きいです。
4子を取られたのは約30目の損ですが、左下で20目ほど稼ぎ、身軽になって、テーマ図のAの大場に回って、捨て石作戦は成功しました。
【参考図1】 下辺の4子に未練を残すと、黒1から3と当ててしまいます。黒5まで、下辺4子は生き残っていますが、地を稼がれた上に、白からAやBの嫌みがあって、手を掛けた割には採算が合いません。
【参考図2】 黒1の当てから5、7と取るのは最悪で、白8の当てを利かされ14まで4子を取られては大きく、捨て石とは言えません。
【参考図3】 石を捨てるといっても、少しでも被害を小さくするのは当然のことで、実戦図の黒7は精一杯の頑張りです。これを黒1に抱えるのは、白2の当てを打たれ、白8と取られることになり、実戦とは大差です。
●メモ● 白石新人王は入段前、中央大学に在学し、囲碁部で活躍。2003年には学生本因坊戦に優勝。3年の時、プロ試験に合格した。在学中の恩返しに、囲碁部の後輩に月1回指導をしている。中大は昨年、秋季関東リーグで2部に陥落したが、2~3子で打てる部員も多く、春のリーグ戦を楽しみにしている。
第36期棋聖戦予選B
白 首藤 瞬七段
黒 白石勇一三段