上達の指南
(4)助けようと無理をせず
(寄稿連載 2011/02/22読売新聞掲載) 石を取られないことに固執すると、自由な発想が湧かなくなります。捨ててもよいと思えば気が楽になり、思考が柔軟になります。
アマチュアの皆さんも石を捨てることを心掛ければ、棋力の向上とともに碁の楽しさも倍増すると思います。
【テーマ図】 黒1の飛びに白2のハネから4とつけられ、上・下の黒が絡まれて嫌な碁になっています。そこで私は、どちらかを捨てる決断をしました。さて、どちらを捨てたでしょうか――。
【参考図】 実は、黒は無理して捨てなくても、両方の石を助けることは可能です。
黒1と伸び、白2に黒3とケイマすればそれぞれ生きることができるでしょう。しかし白4と下辺に侵入され、黒5の受けに白6あたりに打ち込まれると、とても自信が持てません。
手順中、黒3でAとこすめば下辺は安泰ですが、白3と攻められてはたまりません。仮に黒Bで生きても、白6の打ち込みが一層厳しいです。
【実戦図】黒1のハネから3と当てました。白は4の伸びから6、8と手筋を駆使し、白16まで上方の黒を取り切りました。
一見すると黒9子を取られたのは大きそうですが、中央で白2子を抜いたのが厚く、続いて黒17から19と攻め、白A打ち込みの心配などがなくなり、完全に優位に立ちました。
(おわり)
●メモ● 白石新人王の勉強法は主にインターネット対局。棋士同士の「研究会」には属さず、マイペースを貫いている。中国、韓国のプロとの対局も魅力で、週に平均10局は打つそうだ。疲れたときは好きな歴史小説でリフレッシュ。最近では渋川春海の生涯を描いた冲方丁著「天地明察」がお勧めという。
第1回幽玄杯
白 大場惇也五段
黒 白石勇一二段