上達の指南

白石勇一七段の「プラスアルファを意識」

(1)石の強弱に目を向ける

(寄稿連載 2019/03/06読売新聞掲載)

 手を打つとき、まず「何目できそうだ」と、地の大きさを気にする方が大勢います。でも、地を取ること自体より、どんなプラスアルファがあるかを考えることが大事です。すると、自然に正しい場所に石が向かうようになります。

 【テーマ図】今、▲と消しにきた場面です。白はA、Bどちらに打つのがよいでしょうか。地の大きさを比べるのではなく、どんなプラスアルファがあるかで判断したいところです。

 まず、周りの石の強弱に目を向けてみましょう。下辺の白は二間ビラキの強い石です。左下の白も石数が多いので、さほど心配ありません。黒は、▲が弱い石です。白としては、▲への攻めを狙えそうです。

 【1図】弱い黒をつながらせないように、白1と裂いていくのが正解です。黒8まで下辺を荒らされたと感じるかもしれませんが、たった10目ほど。相手の石を切り離した価値はそれ以上です。白9、11と攻めることで、自然と右辺の黒模様が消え、主導権も握れます。

 【2図】白1と受けると、下辺に白地はできますが、ただそれだけです。むしろ、黒石が全てつながって強くなり、黒模様も深くなりました。白aなどの狙いもなくなり、このまま大きな黒地になりそうです。

 1図と2図を比べれば、地の大きさより、プラスアルファに価値があることが明らかです。石の強弱に関わる場所は、プラスアルファにつながります。

●メモ● 白石七段は1984年神奈川県出身。全国高校選手権優勝、中央大学在学時に全日本学生本因坊戦優勝を経て、2005年に入段を果たし、2010年には新人王のタイトルを獲得している。趣味は読書で「大沢在昌や真保裕一をよく読んでいました」とのこと。「運動は昔から全然だめなんですよ」と笑う。

【テーマ図】
【1図】
【2図】