上達の指南

白石勇一七段の「プラスアルファを意識」

(3)状況確認し方向を決定

(寄稿連載 2019/02/20読売新聞掲載)

 中盤のあたりで形勢判断をするとき、地の数を数える方が多いと思いますが、プロは石の強弱や形をより重視します。次の手を選ぶときも同様です。

 【テーマ図】黒がA、B、どちらに打つかの分岐点です。Aなら中央に、Bなら右辺に黒地ができそうですが、地の大きさよりプラスアルファの価値に注目したいところ。黒はCやDの断点があることにも留意しておきましょう。

 【1図】右下の黒は生きている強い石ですので、右辺を受ける必要はありません。黒1から中央に勢力を築くのが、正しい方向です。白aのハネ出しには、黒9、白10、黒bとシチョウに取れるのもポイントです。

 黒7の打ち込みに回り、戦いになれば黒1、3の勢力が働いてきます。続く黒cからの攻めに白8から12と備えられると右辺は白地になりますが、地の損得を気にする必要は全くありません。黒13、15と大きな戦いに持ち込み、外側に石数の多い黒が有利に戦える状況になっています。

 【2図】黒1と右辺の地を囲うのは方向違いです。白4と頭を出されると、白aやbの狙いが残ります。黒5と打ち込んでも、右下の白が援軍になり、白12まで白が楽な戦いになってしまいます。

 1図、2図の結果を見れば、中央に石が向かうプラスアルファの価値が、右辺の地よりもはるかに高いことがおわかりいただけると思います。

●メモ● 白石七段は、3年前からほぼ毎日ブログを更新。「ブログを書き始めて、本も書きたくなった」と、普及にも力を注いでいる。「やさしく語る」シリーズ(マイナビ出版)は好評で、昨年は3冊目の「やさしく語る碁の大局観」を上梓(じょうし)した。東京・五反田で指導碁専門の教室もスタートさせている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】