上達の指南

白石勇一七段の「プラスアルファを意識」

(4)根拠奪いプレッシャー

(寄稿連載 2019/02/27読売新聞掲載)

 次の手を二択か三択で迷うときは、地の大きさではなく、プラスアルファの価値を考えて判断しましょう。最終回の今週は、上級編です。

 【テーマ図】私の実戦で、白番です。A、B、Cの中で、どの手を選ぶのがよいでしょうか。右上、左下の白の勢力を活用する、というのがヒントです。

 【1図】相手の星に対して、AI流の三々に入る手は、個人的にはあまり好まないのですが、この局面では、白1と打ちたいところです。黒2なら白3から生きますが、単に隅の地を取っているわけではありません。周囲の白の勢力を活用するために、黒の根拠を奪って攻めを狙っているのです。

 黒8のとき、白9と黒に迫ります。三々入りからの攻め方は高度なので、まねされる必要はありませんが、根拠を奪って相手にプレッシャーをかける感覚は身につけていただきたいと思います。なお、黒2で3と押さえてきても、白2から白は同じように打ちます。

 実戦は、白21まで白の攻勢です。続いて黒aなら白bと攻める要領で、白cによる上辺の白地化、白dによる中央の白地化などを狙っていきます。

 【2図】白1または白2の掛かりから、ただ地を囲うだけの打ち方は避けたいところです。黒12まで、白の勢力を活かせず、簡単に負けてしまいます。黒aも残っており中央の白模様にも期待ができません。

(おわり)

●メモ● 仲邑菫さん、上野梨紗さんに注目が集まる今年の新入段者だが、白石七段は「13歳の福岡航太朗くんも強い。間違いなくプロになると思っていましたが、予想より早くて驚きました」と語る。「今は情報を選べ、AIも活用できるので、若いスターがたくさん生まれることを楽しみにしています」

【テーマ図】
【1図】
【2図】