上達の指南

白石勇一七段の「プラスアルファを意識」

(2)まず自分の石を強く

(寄稿連載 2019/03/13読売新聞掲載)

 地を取ることだけが目的の手は、序盤、中盤では価値が低いと言っても間違いないでしょう。反対に、わずかしか地が増えない手でも、そこで得られるプラスアルファが大きければ価値は高くなります。

 【テーマ図】黒が1から3と白模様に入り、白がどうやって攻めるかという場面です。AとBではどちらがよいでしょう。まず、周囲の石の強弱を判断して、どんなプラスアルファがあるかを考えることが大事です。

 【1図】正解は白1です。左右の白がつながり根拠を確保したことや黒の根拠を奪った価値が大きく、白7と攻めるリズムが生まれます。白9まで増えた白地は10目にも満たないのですが、むしろ何目増えたかということは、全く考える必要がないと言ってもよいでしょう。

 自分の石が強くなれば、白11のような思い切った踏み込みも可能になります。これは私の実戦ですが、この後、攻めの調子で上辺を白模様にできました。

 【2図】白1とボウシした場合は、黒6まで黒に根拠ができ、逆に白は分断されて根拠がなくなります。△のあたりは眼形ですので攻めもききません。そればかりか、黒8から切られて、むしろ白のほうが弱くなる可能性が出てきます。

 テーマ図の場面は、下辺が攻防の要点でした。仮に2目の地しかできなかったとしてもよいのです。自分の石が強くなると、安心して攻めに向かえるという点は、大きなプラスアルファだと言えるでしょう。

●メモ● 白石七段は、2016年3月のアルファ碁と李世乭九段の対局に触発されたと語る。「囲碁界は大きく変わる。自分も新しいことを始めなければ」と感じた。「白石勇一の囲碁日記」というブログもその一つ。「最近はお休みが増えている」そうだが、基本的には毎日更新され棋士の間でも話題を集めている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】