上達の指南

蘇耀国八段の「コウ争いのテクニック」

(1)「天下コウ」の価値は絶大

(寄稿連載 2007/07/23読売新聞掲載)

 これから4回にわたって、「コウ」をテーマにお話をしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 ところでアマチュアの皆さんは、コウが嫌いなようですね。コウと聞いただけで震え上がり、相手がコウを仕掛ける素振りを見せようものなら、すべて「ごめんなさい」と謝って回避する。そんな光景をよく見かけます。
 でも、そのような態度では絶対に勝負に勝てませんし、上達もできません。碁にコウは付き物。コウがあるからこそ、碁は面白いのです。これからコウ争いのテクニックをお教えしますから、実戦でやみくもにコウを回避するのではなく、コウにチャレンジしてみてください。仮に失敗したとしても、必ずそこから学べることがあるはずです。

 【テーマ図】 黒1の切りでコウが発生。白2の取りに黒3のツケをコウダテにしました。

 さて、この場面で白はイの解消か、ロの受けか。

 【1図】 白1と解消する一手です。ポンポンと抜いた白の姿は強力無比、盤上すべてを圧します。このように、中央に向けてポンポンと抜けるコウの価値は絶大と覚えてください。いわゆる「天下コウ」と呼ばれるもので、相手がどんなコウダテを打ってきても構わず抜いて、まず間違いありません。
 黒2と突き抜かれても、白3と下辺を割り打ちしているくらいで十分、左上の黒が浮き石となっていますし、何より▲がまったくの無駄手となっているのが大きいのです。

 【2図】白1の受けはチャンスを逃しました。というより、黒2とコウを取り返され窮しています。
 白にはコウダテがありませんし、かといって白Aとつぐのでは黒にコウをつがれ、その後の収拾方法がありません。

●メモ● 蘇耀国八段は1979年9月、中国広州市生まれ。91年来日。94年入段、2005年八段。03年新人王戦優勝。04年本因坊リーグ入り。今年の本因坊リーグで挑戦者決定プレーオフに進出するなど、ポスト四天王候補として期待されている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】