上達の指南

蘇耀国八段の「コウ争いのテクニック」

(2)ひどい展開は見ずに抜け

(寄稿連載 2007/07/30読売新聞掲載)

 前回は「天下コウ」というテーマで、その天下コウか否かの判断法として「中央に向けてポンポンと抜ける場合は天下コウ」というお話をしました。今回はその続きと言いますか、やはり天下コウに関連した内容です。

 【テーマ図】 黒1で4とつぎ、白イ、黒ロなら無条件生きでしたが、黒1、3とあえてコウにしてきました。
 白4のコウ取りに黒5のツケコシをコウダテにしようという意図ですが、ここで白は右下を受けるべきか、コウを解消するべきかを問います。

 【1図】 白1とコウを解消する一手です。黒2の連打も相当な大きさですが、左上の出入りはそれ以上ですし、白3と飛べば、それほどキツい攻めにあうこともなさそうです。
 左上は本来、黒から無条件生きがあった所ですから、白に不満はない分かれでしょう。言わば左上のコウは、天下コウなのでした。

 【2図】 白1と右下を受けるのは、黒2とコウを取り返され、今度は白にコウダテがありません。白3のツケには黒4と解消されてしまいます。

 白5の突き抜きもすごい連打ですが、黒6と伸びられると、左上が一気に黒の勢力圏に。左上が完全な白地となった1図と比較すると、この出入りのすさまじさがお分かりになるはずです。
 というわけで今回のまとめですが、一言で表現するとすれば、「コウに負けた時にひどい姿になってしまうコウは天下コウ。従って見ずに抜け」となります。
 今回のケースで言えば、左上黒の生死に関する地の出入りだけでもべらぼうな大きさですが、黒がコウに勝った時に外側の白がボロボロになるので、価値がさらに倍増するということです。

●メモ● 蘇八段は今年、本因坊戦挑戦者決定戦で敗れ、初のタイトル戦登場を逃した。落胆しきりと思いきや、「完敗だったので、それほどでも・・・。それよりも棋聖戦のリーグ入りをかけた碁で、いい碁を落としたのがショックでした」とのこと。

【テーマ図】
【1図】
【2図】