上達の指南

蘇耀国九段の「魅惑の空中戦法」

(1)「5の七」変則的布石の試み

(寄稿連載 2015/03/31読売新聞掲載)

 初手から「5の七」に打つ変則的な布石を昨年から試みています。張栩九段がネットの練習碁で打ち始めたのですが、話を聞いてみると、若いときの私との会話でヒントを得たというのです。星にかかるなら小目や一間や二間がふつうですが、二間より一路高い「5の七」でも遜色ないのでは――そう話したことに思い当たりました。それで、もう一度研究し直して実戦で試し始めたのです。

 【テーマ図】 初めて「5の七」を試した一局です。山城九段にはそれまで勝ったことがなかったので、なんとかしたい気持ちが強かったのです。
 黒1から7まですべて「5の七」です。山城九段もびっくりしたことでしょう。このひし形の厚い布陣に、敵をおびき寄せて攻めようというのが狙いです。
 黒9の飛びは急ぐところではありませんでした。

 【1図】 黒1の小目がこの布石の要点でした。白2のスベリなら黒3と受けていて十分。黒Aからの締め付けもみています。

 【2図】 実戦は白1といいところを占められました。黒2の三々から根拠を奪いにいきましたが、白3の飛びから5と開かれると、攻めは空振りです。
 気を取り直して、右下でも厳しくいきました。黒20まで右辺を広げれば、十分効果が上がっているでしょう。こうなってみると、それぞれの「5の七」がバランスのとれた位置にあるように見えませんか。この勝負は3目半勝ちでした。

●メモ● 蘇耀国九段は中国広州出身。1979年9月生まれ。12歳で来日。日本棋院の院生を経て、94年入段、2014年九段。04年本因坊リーグ入り、07年本因坊戦挑戦者決定戦進出。現在は名人リーグに在籍し、「5の七」の布石も打っている。若手棋士グループのまとめ役も務める。

第62回NHK杯2回戦
白 九段 山城宏
黒 八段 蘇耀国
(2014年)

【テーマ図】
【1図】
【2図】