上達の指南

蘇耀国九段の「魅惑の空中戦法」

(4)「5の七」研究仲間との対決

(寄稿連載 2015/04/21読売新聞掲載)

 張栩九段は「5の七」の布石を一緒に研究する仲間でありライバルでもあります。

 【テーマ図】 黒1に白2と互いに「5の七」です。白4は、「5の七」に「5の七」で迫っています。張九段が用意した対策でした。黒5の飛びで受けたのですが、これはよくなかったようです。白6の小目がいいところで、黒7に白8とケイマに滑って白が働いています。

 【1図】 黒1の小目の位置がよかった。白2と入ってくれば、黒3と飛び下がってじっくり攻める要領です。これなら▲の石も生きてきます。黒1は手を抜いて、黒Aと空き隅の「5の七」に向かうのもありました。張九段はこちらを予想していたそうです。

 【2図】 実戦の続きです。黒1から3と開いて上辺を広げました。黒としては△を浮き上がらせて、この手を悪手にしたいのです。
 白4のぶつかりが好手でした。冷静に考えれば黒6につぐくらいなのですが、明らかに利かされです。悔しかったので、黒5と飛んでがんばっちゃいました。これがいけなかった。白6のハネ込みが好手で、白14まで先手で突き抜かれてはつらい姿です。△の石も悪手どころか立派なのぞきになっています。結果は白中押し勝ちで、張九段にしてやられました。
 まだまだ未解明の「5の七」の布石です。みなさんも常識を捨てて挑戦してみませんか。
(おわり)

●メモ● 研究会は張栩九段と一緒だ。若いころはいろいろな研究会に顔を出していたが、そうもいかなくなった。自分の対局がなければ、棋院の控室で他の棋士と研究する。だれとでも仲よくなる性格で、時間があれば一緒に食事したり飲んだりもする。そんなときも碁の話に夢中になる。

第62回NHK杯3回戦
白 九段 張栩
黒 九段 蘇耀国
(2014年11月)

【テーマ図】
【1図】
【2図】