上達の指南
(2)宇宙流の布石感覚に感銘
(寄稿連載 2015/04/07読売新聞掲載) 常に「5の七」を打つわけではありません。今日はこれで、という気分の時があるのです。幸い、わずかですが勝ち越しています。宇宙流の武宮九段を相手に、「5の七」の布石を試した一局です。中央志向の元祖ですから、なにかいいことを教えていただけると思っていました。
【テーマ図】 黒1から7まで4か所で「5の七」に打って準備万端です。黒9の小目はこの布石の要。白10は遠慮した入り方です。隅に潜り込んで攻められるのを避けています。白12から14と開いて絶対に攻められないようにしています。
黒15のケイマが甘かった。白18までしっかり治まられると、右上の黒が意外に薄い。上辺に入って来られると、なかなかやっかいなのです。
【1図】 黒1とかけるべきでした。白2の受けに、黒3のツケから5と膨らんで、9まで手厚くしておくのがよかったのです。これなら白が入ってくれば、猛烈に攻めることができます。
【2図】 白20と堂々と打ち込んで来ました。武宮九段は白21と滑ったりしません。ここは異筋だと分かっているのです。感覚的にピンとくるのでしょう。黒21とさえぎるのは仕方ありませんが、白22と開かれると、この白を攻めるのは難しくなっています。むしろ右上の黒が薄くて、白からいろいろ利いています。
最終的には勝ったものの、武宮九段の布石感覚に感銘を受けた一局でした。
●メモ● 蘇九段はスポーツ好きで、野球やサッカーは自分でもやる。棋士は体力も大事だから運動は碁のためにもなる。今はフットサルの棋士チームで楽しんでいる。体格がよく運動神経もいいから、味方にとっては頼りになる存在。野球は大の巨人ファンで、球場にも年に2、3回は足を運ぶという。
第40期碁聖戦予選
白 九段 武宮正樹
黒 八段 蘇耀国
(2014年)