上達の指南

孫喆六段の「勝利を呼び込む本筋」

(1)棋力向上阻む思い込み

(寄稿連載 2018/03/06読売新聞掲載)

 アマ初、二段くらいで棋力が止まっている方の理由は何でしょう? 様々な要因がありますが、その一つは「思い込み」ではないかと、僕は思っています。

 思い込みとは、いつの間にか身についてしまった「ここはこう打つもの」という決めつけのことで、俗手と言い換えることもできるでしょう。

 その代表例を取り上げ、正しい打ち方をお伝えいたします。

 【テーマ図】白1の打ち込みに黒2とつけ、白3から9までの進行はよく現れます。続いて両者最善の進行は?

 【1図】皆さんの碁を拝見していると、黒1の出から3とはねて、白4に黒5、白6と進行するケースがほとんどです。

 しかしこれは、白が好機を逃しました。白4の押さえが思い込みの失着だったのです。

 【2図】白1の飛びが、ぜひ覚えていただきたい好手で、これが本筋というもの。黒2から6と封鎖されても、手抜きで生きている点が自慢なのです。

 というわけで実は、1図の黒1、3という手順も、精密さを欠いた俗手なのでした。

 【3図】黒1のハネから行くのが本筋で、これなら白は2と押さえるよりありません。そこで黒3と出れば5の当てを決めることができ、黒7から11の封鎖のあと、黒A、白B、黒Cとコウにする狙いが残ります。

 【4図】白1、3の切り取りによる生きを強要してから黒4と隅に飛び込んで、互角の分かれとなりました。

●メモ● 孫喆(そん・まこと)六段は1996年生まれの22歳で、萩原睦七段門下。2011年の入段以来、ほぼ毎年のように昇段を重ねているホープだ。昨年は新人王戦の決勝三番勝負に進出し、準優勝だった。正確な読みに支えられたクレバーな打ち回しは、棋士の間でも高く評価されている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】