上達の指南
(3)実戦で多用 中盤の定石
(寄稿連載 2018/03/20読売新聞掲載)定石というと「序盤での石の折衝」というイメージが強いかもしれません。しかし、中盤にも“定石”と呼べるような一連の運びが存在します。今回はその代表例を紹介しましょう。
【テーマ図】下辺での競り合いを優位に運ぶため、黒1のボウシはここまで歩を進めたいところです。ただしこう打つからには、白2、4の反撃への対策が用意されていなければなりません。
黒5、白6のあと、どのように打ちますか?
【1図】黒1の当ては俗筋です。白2に黒3と手が戻り、白4と飛ばれた戦いは、黒が不利と言わざるをえません。
それもそのはず、本図は黒1で単に3とついで、白が2と伸びた時に、黒が1と打った理屈です。
【2図】単に黒1のツギは素直な態度で、及第点と言えるでしょう。白は2、4とするくらいなので、黒5で△を制することができます。
しかし、本図が最善というわけではありません。もう少し工夫が必要です。
【3図】黒1とこちらから当て、白2の伸びと換わってから黒3とつぐのが本筋というものです。白4、6の時に黒7と掛ければ、制した白石の数が一つ増えているので、前図より勝ることは明白です。
テーマ図から本図に至る流れは、実戦で使う場面がかなり多く、中盤の定石と呼んで差し支えないでしょう。特に本図の黒1、3は必須の手筋です。
●メモ● 今回取り上げたアテツギについて、孫六段は「結局打つことになる石から、遠い方を当てるのがコツ」と表現している。今回のケースでは、3図における3が「結局打つことになる石」なので、この石に隣接している2から当てるのは異筋。1から当てるのが筋ということだ。