今回も、アマチュアの固定観念のようになっている俗手についてお話しします。

　【テーマ図】盤上の大場を打ち終え、これから中盤戦という場面です。ここでは左下、▲に対する白からのアプローチを考えてみてください。

　【１図】白１のノゾキから３のツケ。アマチュアの方がこの手段を用いているのを、とてもよく見かけます。定石後の定石であるかのように思い込んでしまったのでしょう。しかしこれははっきり言って俗手でした。

　黒４から６、８とカミ取られ弱かった一団を強化してしまいました。このあと白Ａとかけついでも右下の黒は堅いので、下辺を破っても大した価値はありません。白の失敗と言わざるをえない結果です。

　【２図】白１のコスミが、黒の弱点を突く急所です。１図の白１、３があまりに有名（？）なため、ほとんど知られていないようですが、このコスミこそが本筋なのです。

　黒２に白３から５とこすみつけるコンビネーションを、ぜひ覚えてください。

　【３図】黒１なら、白２を先手で利かして中央を分断。白４の好所を占めて大成功です。

　【４図】黒１のツギなら白２と出て、隅の黒１子を取り込んで実利を稼ぎます。黒３に白４がやはり好点で、これも白満足の成果を上げることができました。

　１図と３、４図を比べてみてください。俗手と本筋の違いが一目瞭然です。

●メモ●　孫六段は昨年、新人王戦での準優勝に加え、王座戦でベスト４に進出し、挑戦権獲得に近づいた。今後の飛躍を予感させる活躍だったが、本人は満足していない。「ここ一番で勝てなかったとも言えるわけで、今年こそは何かしっかりとした結果を残したい」と意欲を見せている。