上達の指南

苑田勇一九段の「さばきは斜めに」

(1)難しくても気分は軽く

(寄稿連載 2008/04/28読売新聞掲載)

 ぼくはさばくより攻める方が難しいと思っています。攻めている時は気分はいいのですが、攻め損なうと甘くなってしまい、取り返しがつかないことが多いのです。
 さばくのももちろん難しさに変わりはないけれど、軽い分だけ、気が楽という意味はあるようです。今日から4回にわたり、お話させていただきます。ぼくが実践してきた指導法で、アマのみなさんにある程度好評、と自負しているものです。

 【テーマ図】 黒1のカカリに白2と挟まれました。どうさばくところでしょうか。

 【失敗図】 黒1、3とツケノビる方が多いようです。白4のノビから6とケイマされ、黒7に白8とノビられます。黒は重いだけで白に両方を打たれてさっぱりです。

 【1図】 黒3と押さえて石を斜めに使うのです。黒5から7と当て、9とカケツギます。全部斜めです。黒21まで、立派なさばきです。

 【2図】 1図の白8を1の二間なら、黒2のカケツギが奥ゆかしい。黒6とたたいて、石が躍動していますね。

 【3図】 白2はさばかせないという手ですが、黒3、5、7から9とはねて打てます。

 白14の次に黒はテーマ図のイと打ちたい気分です。テーマ図の白2はロの方が厳しかったようです。

●メモ● 苑田九段は関西棋院所属。大阪市出身で56歳。小川正治七段門下。1968年入段、78年九段。「美人は追わず」など、ユニークな表現を駆使した指導法に定評がある。弟子に関西棋院常務理事の今村俊也九段、田村千明二段、星川愛生、星川航洋初段。

【テーマ図】
【失敗図】
【1図】 8(1)
【2図】
【3図】