上達の指南
(4)白のツケ切りが好手筋
(寄稿連載 2008/05/26読売新聞掲載) 最終回はぼくの実戦から題材を採りました。
【テーマ図】 先番は結城聡九段。10年ぐらい前だったと思います。いま△を▲と一間に高く挟まれた局面です。結城九段は力が強いので、ここのさばきには苦心しました。
【失敗図】 白1とケイマに逃げ出すのは、この局面では下策です。黒2とこすまれ、白3から5と戻った時、黒6のコスミツケで眼形を奪われます。白7の押しに黒8と引かれ、あてがありません。白の形は重く、もう勝てない、としたものでしょう。
【成功図】 白1、3のツケ切りがさばきの好手筋です。黒4の伸びはこの一手。白5の当てに黒6と下がれば、白7と押さえ、黒8の当てから14までは一本道。白15のケイマが絶好点で、この場合、黒は左方の8子がまだ生きていないのが気になります。白としてはそれが狙いで、十分さばいたといえるでしょう。
白3では6の二段バネも一つの形ですが、黒3とつがれ、白12のカケツギに黒7と押さえられ、白5切りに、黒13と当てられるのがしゃくです。
【実戦図】 結城九段は黒6の当てと変わってきました。白9のツケがこの際の手筋。白13に黒15と出ると、白1と取り返され、コウが続きません。黒19まで、白Aの切り味もあり、まずまずのさばきかと思っていました。
(おわり)
●メモ● 苑田九段の著書は、「囲碁観が180°変わる苑田流格言」「苑田流格言実戦講義」(ともに毎日コミュニケーションズ)、「苑田勇一流基本戦略」「打っていい場所悪い場所」(ともにNHK出版)など8冊ほど。独特の語り口でわかりやすく、アマに人気がある。