上達の指南

苑田勇一九段の「さばきは斜めに」

(2)強い方は石をタテヨコに

(寄稿連載 2008/05/12読売新聞掲載)

 石の強弱は石数である程度わかります。弱い方の立場はさばくことになります。さばくコツは、ツケて、石を斜めに使います。反対に強い方の立場は、石をタテヨコに使うのです。

 【テーマ図】 黒1の打ち込みに、白2とコスまれたところです。左上4分の1に限っていえば、石数は白5、黒2です。

 【失敗図1】 黒1の押しは得策ではありません。白2のハネから8と眼形を脅かされ、生きるのにきゅうきゅうとさせられます。黒1は、3でAの切りがないといけないのです。この場合は、白Bで困ります(白Bを3は黒Bから捨て石にします)。

 【失敗図2】 黒1のツケはさばきの手筋。黒3のハネは石を斜めに使っています。強い立場の白は4のツギとタテヨコです。ここで、黒5のツギは重いのです。黒7、9の二段バネは手筋ですが、白10から12と切り込まれ、14と強引に封鎖されてしまいます。次に黒Aと切るのは天下コウのようなもので、とても戦えそうにありません。明らかに黒は失敗です。

 【成功図】 失敗図2の黒5では1と隅に入り込むのが好手でした。白2のアテから4の押さえ込みに、黒5と切りを入れ、9、11と生きます。白12のトビに黒13を決め、15と守れば、けっこうさばいているでしょう。隅のえぐりが大きいのです。

●メモ● 苑田九段は第3期天元戦五番勝負に進出し、さらに第12、14期天元戦、第23期碁聖戦に挑戦したが、いずれも敗退。また、弟子の今村俊也九段も第14期碁聖戦、第55期王座戦の挑戦に失敗した。合わせて6回、今のところ、この師弟はタイトルに縁がない。

【テーマ図】
【失敗図1】
【失敗図2】
【成功図】