上達の指南
(3)スペース狭めるハネ殺し
(寄稿連載 2007/01/29読売新聞掲載) わたしにとって、詰め碁はプロとしての勉強ではなく楽しい遊び。唯一といっていい趣味で、今でも暇さえあれば詰め碁を見ています。絶版になった詰め碁集を探して、古本屋めぐりをしていたくらいです。それでも1日1回は「こんな筋があったのか!」って感動させられます。
こどものころからそんなふうでしたから、「世界中の詰め碁を解いてしまったんじゃないか」と思ったこともありました。でも、これはわたしが知らなかっただけ。最近ではプロ仲間の作った未発表の詰め碁を見せてもらっています。張栩碁聖をはじめとして、ユニークな詰め碁作家が何人もいるんです。
韓国でも詰め碁作りに励んでいるプロがいます。韓国へ行くたびに作品集を何冊も買いこんで、「これで何か月かは持つなぁ」と悦に入っています。それが「発陽論」(江戸時代に書かれた専門家向け詰め碁集)と同じくらい難解。実戦ではありえない石の配列ですが、読みの訓練にはなります。
さて、今回は死活の基本形から「ハネ殺し」の問題を見てもらいましょう。
【テーマ図】 黒番です。この白を取るには――。
【正解図1】 黒1が正しい。白のスペースを狭めます。
【正解図2】 白1なら黒2とさらに狭め、4の置きがとどめ。白5に対する黒6、8が死活の筋です。
【失敗図】 黒1からのハネは、この場合うまくいきません。黒3と置いて眼を奪っても、白4と抵抗される。以下、無理に取りに行っても白12まで脱出されます。
【参考図】 黒1に対して、白2は抵抗不足。黒3でもAでも死んでしまいます。
【手順図】 黒の大ゲイマジマリに、白1から生きにきました。テーマ図は、これに黒A、白B、黒Cが加わった形です。
●メモ● 鈴木三段は昨年、張栩碁聖と組んでリコー杯プロペア戦で優勝。今年も同ペアで決勝に進出している。「わたしが振り回して、張碁聖があとのフォローをうまくしてくれます。張碁聖がこちらのレベルに合わせてくれているようです」