上達の指南
(4)生きる急所は殺しの急所
(寄稿連載 2007/02/05読売新聞掲載) スポーツ選手が毎日ロードワークを欠かさないように、わたしたち囲碁のプロも、日々読む力、頭の基礎体力を養っています。
以前、小林覚九段から「毎日400題の詰め碁を解いている」とうかがいました。400題といってもアマチュア向けのやさしい問題ばかりだそうですが、それでもこういうトレーニングは欠かせません。読みも体力と同じで、ちょっとサボると力が落ちてしまいます。一週間でも詰め碁を休むと、自分ではっきりわかるくらい読むスピードが落ちています。
ということは、今まで詰め碁をやっていなかった人が1週間も詰め碁に取り組めば、てきめんに読むスピードがあがるはず。囲碁の勉強とか訓練などと気張らず、毎日楽しく詰め碁を眺めていただければ、驚くほど読めるようになっているでしょう。
最後は生きる問題を。変化を読み切るのは意外と大変かもしれません。
【テーマ図】 黒番で、隅を生きてください。
【正解図】 黒1から3のカケツギが眼作りの急所。手堅く生きることができました。
【失敗図1】 黒3と広げても、白4の放り込みから6が厳しい筋です。
【失敗図2】 黒1から3と粘って、白4からのコウがやっとです。二段コウですが、もちろん無条件に生きた方が勝ります。
【失敗図3】 黒1には白2置きがくる。生きるための急所は殺すときの急所にもなることが多いもの。黒3から5には白6から10まで。生きることはできません。
【手順図】 黒1とすそにかかった形から派生した形。黒11で12、白11、黒Aが一般的ですね。でも、上辺方向へ展開してもつまらない場合、黒11から隅で生きる手が有効になります。
(おわり)