上達の指南

鈴木嘉倫七段の「定石その後の狙い」

(1)互いに詰めが狙いの筋

(寄稿連載 2010/08/24読売新聞掲載)

 今日から4回にわたり、皆さんの碁でも頻繁に現れる人気定石の「その後の狙い」についてお話ししていこうと思っています。よろしくお付き合いください。

 【テーマ図】 白1の両ガカリに黒2、4とツケ伸び、白5と三々に入って黒8まで。最もポピュラーな人気定石と言っていいでしょう。この後、黒白双方にどんな狙いが残っているのかを見ていきましょう。

 【1図】 黒からは1の詰めが好点となります。次に黒Aの置きが強烈な狙いとなっているので、白は何か応じなければなりません。

 【2図】 白1とツキ当たれば、黒は2の伸び。白は黒Aの置きを先手で封じることができました。ただし黒も2と伸びて右辺で勢力を築くことができたので満足。黒Bのコスミが利くというプラスも生じています。白がこれを嫌えば、1でC、黒2、白Dと頭を出す選択もあります。

 【3図】 一方、白からの狙いは上辺にあります。具体的には白1の詰めで、次に白Aと逃げ出す手を見ています。

 対して黒は2のブツカリで先手をとるか、Bのコスミで応じることになるでしょう。また白1ではCやDも半利きですが、黒への響きが弱いので、黒にも手を抜く余裕があります。

 【4図】 白1、3は最も強い態度ですが、これは難解。周囲の力関係やコウ立ての有無などと、全局的な兼ね合いしだいということになります。

●メモ● 鈴木七段は東京都出身、34歳。菊池康郎氏が主宰する緑星学園で学び、1994年に入段した。2009年七段。持ち時間を目いっぱいに使う長考派として知られている。独身で、「大いに募集中」とのこと。現在、棋士会の幹事として、棋院運営に携わっている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】