上達の指南

鈴木嘉倫七段の「定石その後の狙い」

(2)下がりをめぐる駆け引き

(寄稿連載 2010/08/31読売新聞掲載)

 皆さんの実戦にも現れる人気定石が一段落した後の、黒白双方からの狙いについてお話ししています。

 【テーマ図】 黒1の一間バサミに白2と高くハサみ返し、黒3のツケから白8まで。おなじみの定石ですね。双方にどんな手段が残っているでしょうか。

 【1図】 まずは白の狙いですが、1の下がりから3と当てる利かしが有効です。
 白1と「2子にして捨てる」のが手筋というもので、こののち白Aの押しやBのツケという味が残ることになりました。
 白1、3は序盤の早い段階で打たれる利かしであり、ここまでを定石と呼んでも差し支えないくらいの常用の手段です。

 【2図】 1図の利かされを嫌うなら、先に黒1と伸びるのが立派な一手となります。対して白2と右辺を受けているくらいなのですが、手を抜くと黒から鋭い手段が飛んできます。

 【3図】 黒1のツケがその一手。白2と押さえても黒3から7とされ、白はすでに困っています。▲がなければ、白には▲に当てて黒Aと換わってから、白Bと二段に押さえる抵抗手段があったのですが――。
 また白2で3と内から受けるのでは黒2と引かれ、白4とつらいツギを打たされるのでいけません。

 【4図】 黒1と右辺を詰めるのも有力な一手です。次に黒Aのハネ出しがあるので、白2の受けが絶対。これもまた半ば定石化された進行です。

●メモ● 鈴木七段は昨年、日本棋院野球部に入部した。ポジションは二塁手および外野手。野球の経験はなかったが、興味を抱いたことにはのめり込む性格で、練習に積極的に参加した結果、技術も大いに向上し、今やチームには欠かせない戦力となった。安定して鋭い打球を放つ打撃力が魅力。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】