上達の指南
(1)隅に入って実利を稼ぐ
(寄稿連載 2019/02/06読売新聞掲載)「見合い」という用語をご存じでしょうか。これを意識することで碁の幅が広くなり、また、戦いにおいても、見合いの原理が役に立つことが多々あります。
【テーマ図】黒11のカカリに白12とはさみ黒13以下白24まで、黒の実利対白の外勢という碁形になりました。
ここで黒は左辺の白模様に向かいますが、黒A~Cのどこが見合いのテクニックを発揮できるでしょうか?
【1図】黒1とスソから掛かるのが、見合いの狙いを含んだ好手で正解です。
白2と受けるなら黒3の伸びを利かして、黒5と立派な所帯を持って十分です。手順中、白2と隅を守った手で――。
【2図】白2と掛けてくるなら、黒3のハイ一本を決めて黒5と三々に入ります。黒7まで白地を食い破りながらよい地を持って、これも黒十分です。
このように隅に入り込んで実利を稼ぐ手と、1図のように白模様を割っていく手を含みにするのが、「見合いのテクニック」なのです。
いかがですか? 少しも無理がないでしょう。
【3図】見合いのテクニックをご存じないと、直接黒1などと打ち込み、白2のハサミ以下白6などとなります。黒は根拠がなく、ただお荷物を作ったにすぎません。
【4図】黒1とやみくもに突入するのは、白2~4と攻められるだけです。
くれぐれも「見合い」の精神をお忘れなく。
●メモ● 鈴木七段は林漢傑八段との間に、4歳の優月ちゃんと1歳の優里ちゃん、2人のお嬢さんがいる。長女には碁を教え始めたが、まだ乗り気ではなさそう。せめて嫌いにならないように、と心掛けている。次女の方が負けん気が強そうでこちらに期待、という。