上達の指南

鈴木歩七段の「見合いのテクニック」

(3)シチョウ絡め中盤有利に

(寄稿連載 2019/02/20読売新聞掲載)

 「見合い」で直感的に思い浮かぶのは、序盤の辺への割り打ちでしょう。

 しかし、中盤の戦いにおいても、見合いの原理が生かされる場面があります。

 【テーマ図】黒15のスベリに白16のハサミは逃せません。

 これで白17に受けるのは、黒Aの開きで白甘いでしょう。黒17のコスミ以下白24の抱えまで、実利対厚みのワカレです。

 黒27のケイマに白28の割り打ちは、白BとCの開きを見合いにした絶好点です。

 さてここで、黒Dの逃げ出しと上辺の荒らしを見合いにした、まさに絶好のシチョウ当たりがあります。

 【1図】黒1のカタツキが、2の逃げ出しと3の踏み込みを見合いにした一手で、正解です。

 白2のポン抜きなら、黒3の遮断が厳しいです。白は4、6と逃げるしかなく、黒7の開きまで上辺に所帯を持って、十分の分かれです。

 白2と抜かずに――。

 【2図】白2と上辺を受けていると、黒3の逃げ出しがきつくなります。

 既にシチョウは成立せず、白は4から6と整形するほかありません。黒7の切りから9と気持ちよくポン抜いて、黒が大成果を上げます。

 1、2図どちらにしても、黒1と見合いの一手を打てば、黒断然有利な形に持ち込めます。中盤の見合いの効果は大きいのです。

●メモ● 鈴木七段は、ご主人の林漢傑八段、安斎伸彰七段と「トライカップ囲碁団体戦」に出場した。チーム名は「にくまんじゅう」。長女の優月ちゃんが、次女の優里ちゃんに付けたあだ名が「にくまんじゅう」。ここからチーム名が付いた。残念ながら張豊猷八段の「キングと棋士」チームに敗れた。

【テーマ図】
【1図】
【2図】