上達の指南
(1)一歩前に行ける合理性
(寄稿連載 2013/03/05読売新聞掲載) 私は25年ぐらい前から高目を愛用するようになりました。それまでは目外しが多かったのです。4回にわたり、私の実戦を題材に、高目について日ごろから考えていることをお話しさせていただきます。
高目は相手が入ってきた場合、一歩前に行けます。そこが合理的かな、と考えているのです。
【テーマ図】 林さんは一番勝率の悪い相手かもしれません。ほとんど勝った記憶がないんですから。右下隅での高目定石の後、白模様に▲と臨んだ局面です。白はどう打つものか。
【変化図1】 私は白1と厳しく迫りました。黒2の押しなら白3とはねます。黒4はあき三角で、この愚形には耐えられません。白の理想形でしょう。
【実戦図】 黒21は筋。黒23と飛んでさばきを図ったのに対し、私は白24と飛びました。
【変化図2】 白1のツケが良かったようです。黒2に、白3と背中を厚くします。黒4以下、下辺に侵入されますが、白15と押して調子がいい。「白優勢」といってもよいでしょう。
実戦図、黒29の犠打から31、33と突き抜かれました。黒イのツギも残って、白は思っていた以上に不満です。
高目定石の後は、注文通りの展開になりかかっていたのですが、失敗してしまいました。私の甘いところで、厳しさが足りません。
結局、この碁は5目半負けました。
●メモ● 高木九段は横浜市出身。1943年生まれ、69歳。中川新之七段門下。62年入段、66年五段、81年九段。これまでの生涯成績は910勝546敗4分。勝率6割2分5厘。昨年は7勝9敗。そのうち約8割は高目を打っている。第11期十段戦で坂田栄男十段に挑戦し、0-3で敗退。
第21期棋聖戦 九段優勝戦
白 九段 高木祥一
黒 九段 林海峰