上達の指南

高木祥一九段の「私の高目作戦」

(2)定石の運用に特効薬なし

(寄稿連載 2013/03/12読売新聞掲載)

 定石と呼ばれるものには、当然、有利、不利はほとんどありません。その後の運用次第ということになるわけです。運用には感覚とか力が必要とされるでしょう。それは各自が磨くしか、特効薬はないのです。

 【テーマ図】 片岡さんには3勝10敗と大きく負け越しています。片岡さんは折り目正しい碁という印象を受けますが、もちろん戦いの力は、内にしっかりと秘めています。
 左上で白の高目からのカケに、黒がつけたことから、難しい戦いが始まろうとしています。△と下がった局面です。黒はイと曲げるのか、ロと押さえるのか。

 【変化図1】 黒1の曲げには、白2から4と曲がります。黒5に、白6のハサミツケから黒13でコウになりますが、白14につぐことができず、黒15と解消し、白16と切る変化になります。これは断然白良しです。

 【実戦図】 黒1の取りに、白2の当てから8とかけて絞ったのが常用の手筋。だが、白12は、ちょっと性急でした。

 【変化図2】 ここは白1の方が味わい深かったのです。黒2に白3と取り、黒4の切りには構わず、白5のカカリを急ぎます。これなら白がやや面白かったでしょう。
 実戦図、白24では29と芯を止める一手でした。黒イに白25の方からかかり、広々としてかなりの碁でした。黒29となり、白の不本意な流れです。

●メモ● 高木九段は本因坊秀策の研究では第一人者といわれる。日本棋院から「秀策 極みの一手」(2010年)も出版している。秀策の打ち碁から30局を精選し、コミのなかった時代、先番の秀策がいかに強かったか、また白番ではどう工夫したかを掘り下げている。

第24期碁聖戦 予選
白 九段 高木祥一
黒 九段 片岡聡

【テーマ図】
【変化図1】 13(10の上)
【実戦図】 18(13の2路右)
19(13の右)、21(13の2路右)
【変化図2】