上達の指南
(4)常識にとらわれない碁を
(寄稿連載 2013/03/26読売新聞掲載) 今年の囲碁界は、井山裕太六冠を中心に、山下敬吾名人、張栩、高尾紳路、羽根直樹九段らが競い合い、大いに盛り上げていってもらいたいものです。我々年配者もただ黙って見ているだけでなく、たまにはひと泡吹かせるぐらいの気概を持たねば、と心を新たにしています。
【テーマ図】 山下さんとはほとんど互角のはずです。(高木九段の2勝3敗)。いま、△とかけて黒2子の動きをけん制した局面です。ここで注目しなければならないのは左下隅です。高目定石の後にできた黒の厚みをどう生かすかが重要なのです。ここは黒イとつけて、直接動き出すのが最も厳しく、それが勝利への早道だったようです。
【変化図1】 黒1のツケに対し、真正面から白2、4と出切るのは、黒5の切りに白6の抜きなら、黒7と当てられて白が困ります。
【変化図2】 白2のコスミツケなら、黒3から9までは一本道です。ここで白はAの当ては決めずに10とはねるのが趣のある打ち方です。黒11はこの一手です。黒17までとなって、白が少し忙しいでしょう。左下の黒の厚みも働きそうです。
【実戦図】 私としては珍しく、黒1から3とゆっくり打ちました。黒11の飛びまで、作戦通りに進んでいます。この碁は6目半勝ちました。
今年も常識にとらわれず、思い切りのいい碁を打ちたいものです。
(おわり)
●メモ● 高木九段は団鬼六さんの小説「落日の譜 雁金準一物語」に寄せた「その後の雁金準一」の中で、雁金と本因坊秀哉名人との2局を解説している。団さんは将棋はアマ6段で、高木九段も日本棋院有数の指し手として知られ、ほかに林海峰名誉天元、工藤紀夫九段らの名前があげられる。
第61期本因坊戦 予選
白 天元 山下敬吾
黒 九段 高木祥一